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子供へのコロナワクチンについて

先日ファイザーの新型コロナワクチンの接種年齢が、12才以上となりました。では子供たちへのワクチン接種はどのように考えればいいのでしょうか? 日本小児科学会が先日「子供並びに子供に接する成人への接種に対する考え方」を発表しました。ひとつの考え方として大変参考になります。以下に添付します。

 

新型コロナワクチン
   ~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~
              公益社団法人日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会

以下は現時点での情報に基づくもので、引き続き新型コロナワクチンに関する情報を収集して解析を行い、 内容を変更することがあります。

要旨 ・子どもを新型コロナウイルス感染から守るためには、周囲の成人(子どもに関わる業務従

事者等)への新型コロナワクチン(以下、ワクチン)接種が重要です。 ・重篤な基礎疾患のある子どもへのワクチン接種により、新型コロナウイルス感染症(以下、

COVID-19)の重症化を防ぐことが期待されます。 ・健康な子どもへのワクチン接種には、メリット(感染拡大予防等)とデメリット(副反応

等)を本人と養育者が十分理解し、接種前・中・後にきめ細やかな対応が必要です。

はじめに
国外での小児
(12~15 )を対象とした接種経験等 1)をもとに、わが国でも 2021 年 

31 日に 12 歳以上の小児へのワクチン接種が承認され、同年 月 日から適用 2)となりま した注)1

国内では小児に対するワクチン接種後の副反応に関する情報はありません。一方で、国内 の医療関係者約 万人へのワクチン接種後の重点的調査(コホート調査)から、接種部位の 疼痛等の出現頻度が高く、若年者の方が高齢者より接種後に発熱、全身倦怠感、頭痛等の全

3身反応を認める割合が高いことが明らかになっています 。

注)1:2021 年 月 日現在、12 歳以上の小児への接種が承認されているワクチンはファイザー社製の みで、12 歳未満の子どもに接種可能なワクチンはありません。武田/モデルナ社製ワクチンの接種 年齢は 18 歳以上です。

そこで、子どもならびに子どもに接する成人へのワクチン接種に対する考え方を示します。

1.子どもに関わる業務従事者等へのワクチン接種が重要であると考えます

4子どもへの感染源の多くは周りにいる成人であることから 、子どもを感染から守るため

には、周囲の成人が免疫を獲得することが重要と考えます。16 歳以上の約 万人を対象と

した国外の研究では、回接種後のワクチン効果は 95%(95% 信頼区間、90.3~97.6)で 注)5)

、発症を予防する高い効果が報告されました 。また、英国の研究結果から無症候性の 感染を防ぐことも明らかになっています 6)ので、ワクチン接種により周りの成人から子ど もへの感染が予防できる可能性が期待されます。

1

特に、重症化が懸念される医療的ケア児等に関わる業務従事者等 注)3、重篤な基礎疾患の

ある子どもに関わる業務従事者等 注)および健康な子どもに関わる業務従事者等 注)は、

職種・勤務形態を問わずワクチンを接種することが重要と考えます。
注)2:ワクチンを 回接種すると 95%の人が発症しないという数字ではありません。ワクチン 回接種 後に発症した人が約 万人のうち 人、プラセボ(生理食塩水)接種後に発症した人が約 万人

のうち 162 人という数字から計算されたものです。 注)3:障害児入所施設(医療型を含む)、児童発達支援センター(医療型含む)、児童発達支援、居宅訪

問型児童発達支援、障害児相談支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援、特別支援学校放 課後等支援事業などの事業を実施している施設・団体の職員、在宅ケアを行なっている家族(12 歳以上)

注)4:院内学級関係職員、医療機関におけるボランティア等 注)5:保育所(認可・認可外をとわず)、幼稚園、認定こども園、小・中学校、特別支援学校(高等部を

含む)、留守家庭子ども会、学習塾、児童相談所一時保護所等の職員

2.子どもへのワクチン接種の考え方
1)重篤な基礎疾患のある子どもへの接種

国外では、神経疾患、慢性呼吸器疾患および免疫不全症を有する子どもの新型コロナウイ

7ルス感染例において、COVID-19 の重症化が報告されています 。国内においても接種対

象年齢となる基礎疾患 8)のある子どもの重症化が危惧されますので、ワクチン接種がそれ を防ぐことが期待されます。

しかし、高齢者と比べて思春期の子ども達、若年成人では接種部位の疼痛出現頻度は約 90%と高く 1),3)、接種後、特に 回目接種後に発熱、全身倦怠感、頭痛等の全身反応が起こ る頻度も高いことが示されています(例:37.5°C以上の発熱は 20 代で約 50%、50 代で約

3)
30%、70代で約10%) 。以上のことから、ワクチン接種を検討する際には本人および養

育者に十分な接種前の説明と接種後の健康観察が必要であると考えます。 基礎疾患を有する子どもへのワクチン接種については、本人の健康状況をよく把握して いる主治医と養育者との間で、接種後の体調管理等を事前に相談することが望ましいと考

えます。

2)健康な子どもへの接種
12 歳以上の健康な子どもへのワクチン接種は意義があると考えています。COVID-19 

防対策の影響で子どもたちの生活は様々な制限を受け、子どもたちの心身の健康に大きな

4影響を与え続けています。小児 COVID-19 患者の多くは軽症ですが 、まれながら重症化

することがありますし 7)、同居する高齢者の方がいる場合には感染を広げる可能性もありま す。なお、子どもがワクチン接種をした場合、その後のマスク着用などの感染予防策の解除 については、今後の流行状況などを踏まえて慎重に考える必要があります。

子どもへのワクチン接種は、先行する成人への接種状況を踏まえて慎重に実施されるこ とが望ましく、また、接種にあたってはメリットとデメリットを本人と養育者が十分に理解 していること、接種前・中・後におけるきめ細かな対応を行うことが前提であり、できれば 個別接種が望ましいと考えます。やむを得ず集団接種を実施する際には、本人と養育者に対

2

する個別の説明をしっかり行う配慮が望まれます。ワクチン接種を希望しない子どもと養 育者に対しては、特別扱いされないような十分な配慮が必要と考えます。

小児 COVID-19 が比較的軽症である一方で、国外での小児を対象とした接種経験等では、

ワクチン接種後の発熱や接種部位の疼痛等の副反応出現頻度が比較的高いことが報告され

1)
ています 。十分な接種前の説明がないまま副反応が発生することがないようにすることが

重要です。 最近イスラエルや米国などから、若年男性におけるワクチン接種後の心筋炎の発症が報

告されています 9, 10)。ワクチンとの因果関係やその臨床像・重症度についても、まだ十分な

情報は得られていませんが、学会として今後も情報を収集し発出していきます。当委員会で

11)
は、小児の COVID-19 に関する論文を抄訳して学会ホームページ上で発表 しています。

今後も新たな情報をもとに更新していきます。
参考文献
  1. 厚生労働大臣:「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施について(指示)」の一部改正に ついて 厚生労働省発健05314号令和3531. https://www.mhlw.go.jp/content/000786653.pdf(2021 年 月 日アクセス)

  2. 伊藤 澄信、他:令和 年度厚生労働行政推進調査事業費補助金 (新興・再興感染症及び予防接種 政策推進研究事業)新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)健康観察日 誌集計の中間報告(6)第 60 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和3 年度第8回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催: 2021 年 月 26 日)資料. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18848.html(2021 年 月 日アク セス)

  3. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会:「データベースを用いた国内発症小児 Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) 症例の臨床経過に関する検討」への参加のお願い. http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=344(2021 年 月 日アクセス)

  4. Polack FP, Thomas SJ, Kitchin N, et al.: Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med. 383(27):2603-2615, 2020.

  5. Hall VJ, Foulkes S, Saei A et al.: COVID-19 vaccine coverage in health-care workers in England and effectiveness of BNT162b2 mRNA vaccine against infection (SIREN): a prospective, multicentre, cohort study. Lancet 2021;397(10286):1725-35, 2021.

7. 8.

  1. Vogel G, Couzin-Frankel J:Israel reports link between rare cases of heart inflammation and COVID- 19 vaccination in young men. https://www.sciencemag.org/news/2021/06/israel-reports-link- between-rare-cases-heart-inflammation-and-covid-19-vaccination(2021 年 月 11 日アクセス)

  2. American Academy of Pediatrics: CDC confirms 226 cases of myocarditis after COVID-19 vaccination in people 30 and under. https://www.aappublications.org/news/2021/06/10/covid-vaccine- myocarditis-rates-061021(2021 年 月 12 日アクセス)

11. 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会:小児の新型コロナウイルス感染症の診療に関連した論 . http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=334(2021 年 月 日アクセス)

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1. Frenck Jr RW, Klein NP, Kitchin N, et al.: Safety, Immunogenicity, and Efficacy of the BNT162b2 Covid-19 Vaccine in Adolescents. N Engl J Med. 2021 in press. doi: 10.1056/NEJMoa2107456.

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Kainth MK, Goenka PK, Williamson KA, et al.: Early Experience of COVID-19 in a US Children's

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Hospital. Pediatrics. 146(4):e2020003186, 2020.

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厚生労働省:第 43 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会(2020 年 12

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. https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000711250.pdf(2021 年 月 日アクセス)

月 25 日開催)資料(日本小児科学会提出文書を含む)